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弁護士が,過払金返還請求をする場合,過払いが発生した時点から,5%の遅延損害金を付加して請求をします。それはなぜかというと,過払金返還請求は,不当利得の返還ということになりますが,その不当利得について,知っていたか否かで,民法704条の「悪意」の受益者にあたるか否かが決まります。そして,利息制限法を超過した利息の受領が許されるためには,貸金業法43条のみなし弁済の適用が認められなければなりません。
このみなし弁済の適用関係の有無については,43条の他の要件を満たした上で,利息を任意に支払っていたか否かで,従前争いがあり,この点を争って,期限の利益喪失下の支払は任意の支払とは言えない,として,みなし弁済規定の適用を事実上否定したのが,最高裁平成18年1月13日判決でした。
この点,本判決では,期限の利益喪失下の制限超過部分の支払については,支払の任意性の点で貸金業法43条1項の適用要件を欠き,有効な利息債務の弁済とはみなされない,ということを確認していますが,悪意の点について,期限の利益喪失下の支払の受領というだけでは,悪意の受益者とは認められない,としています。
この判決が,どのような影響を実務に及ぼすかは,これから裁判所において,貸金業者がこの判決をもとにどのような主張を展開するかにかかってきますが,この判決は,「任意に支払ったか否か」の部分で期限の利益喪失下の支払というだけでは,悪意の受益者とは認められない,と言っているだけで,他のみなし弁済の適用要件を満たしていない貸金業者の悪意推定を否定するものではない,と考えられます。
大手の貸金業者のほとんどは,みなし弁済の適用要件をみたした形での利息の受領をしていませんでしたから,この判決が実務に及ぼす影響は,特定の業者との過払金返還請求についてのみと考えられます。
もっとも,この判決に依拠して,訴訟前交渉の段階で遅延損害金を付しての和解はますます困難となるものと予想され,その限度では,過払い金返還請求交渉の実務で混乱が生じると思われます。
<平成21年7月10日最高裁判決抜粋>
(1) 平成18年判決及び平成19年判決の内容は原審の判示するとおりであるが,平成18年判決が言い渡されるまでは,平成18年判決が示した期限の利益喪失特約の下での制限超過部分の支払(以下「期限の利益喪失特約下の支払」という。)は原則として貸金業法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできないとの見解を採用した最高裁判所の判例はなく,下級審の裁判例や学説においては,このような見解を採用するものは少数であり,大多数が,期限の利益喪失特約下の支払というだけではその支払の任意性を否定することはできないとの見解に立って,同項の規定の適用要件の解釈を行っていたことは,公知の事実である。平成18年判決と同旨の判断を示した最高裁平成16年(受)第424号同18年1月24日第三小法廷判決・裁判集民事219号243頁においても,上記大多数の見解と同旨の個別意見が付されている。
そうすると,上記事情の下では,平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。したがって,平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については,これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない。
(2) これを本件についてみると,平成18年判決の言渡し日以前の被上告人の制限超過部分の支払については,期限の利益喪失特約下の支払であるため,支払の任意性の点で貸金業法43条1項の適用要件を欠き,有効な利息債務の弁済とはみなされないことになるが,上告人がこれを受領しても,期限の利益喪失特約下の支払の受領というだけでは悪意の受益者とは認められないのであるから,制限超過部分の支払について,それ以外の同項の適用要件の充足の有無,充足しない適用要件がある場合は,その適用要件との関係で上告人が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,上告人が悪意の受益者であるか否かの判断ができないものというべきである。しかるに,原審は,上記のような検討をすることなく,期限の利益喪失特約下の支払の受領というだけで平成18年判決の言渡し日以前の被上告人の支払について上告人を悪意の受益者と認めたものであるから,原審のこの判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。





