【質問】
 

せっかく再生計画案が認可決定されて、計画どおりに返済をしてきましたが、会社の景気が悪化したためにボーナスがカットされてしまいました。
 

ボーナスを頼りにしていたので、今後の再生計画の履行は困難となりそうです。
 

計画の変更が賄えないほどに経済状況が悪化した場合に、ハードシップ免責というものを知りましたが、そもそもどんな制度ですか?
 

なるべく破産を回避したいのです。
 

 

ご質問者様のように、再生計画案が認可決定されたものの、景気の悪化によるボーナスカットや、病気等によって収入が低くなる場合もありましょう。
 

しかし、大変お辛い状況であるものの、返済をしないで放置しておくと、債権者から「再生計画の取消」を申立てられてしまうのです。
 

個人再生手続には、「再生計画の変更」という制度と、再生計画による分割弁済を途中で打ち切って残額の支払い責任を免除する「ハードシップ免責」という制度が用意されています。
 

この章では、再生計画の変更に伴うハードシップ免責の意義と要件について、法令を基にわかりやすく解説いたします。
 

関連記事>>>まさかのリストラで弁済期間を延長したい!再生計画は変更できるの?

 
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ショウブ(優しい心)ショウブ(優しい心)

ボーナスからの返済は大きいですね。どんなに苦しい状況でしょうか。

ですが、場合によっては、新たに再生手続の申立てを行うことも可能ですからね。

お辛いことですが、自己破産に切り換えることも選択技の一つに加えてください。

いずれの場合も、弁護士や司法書士と連絡を密にされて進めてくださいね。


 

ハードシップ免責とは?

 

小規模個人再生手続においては、【ハードシップ免責】という免責制度が認められています。
 

 

ハードシップ免責とは、【債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難になった場合などにおいて、負債の4分の3以上の額の弁済を終了していた場合は、裁判所の免責決定により免責をされ、その後の支払いをしなくてもよいこととされる制度】です。
 

 

つまり、再生計画の全てを終了していなくても、後述の要件を全て満たしたような場合には、再生計画が完全に遂行された場合と同様に免責されるという訳です。
 

なお、ハードシップ免責は、通常の再生手続には存在せず、小規模個人再生手続にだけに認められた独特な救済制度でもあります。
 

ハードシップ免責が小規模個人再生手続に導入された理由は?

 

それでは、なぜ?このような制度が小規模個人再生手続にのみ導入されたのでしょうか。
 

例えば、債務者のAさんが再生計画案を作成し、書面による決議を経て裁判所の認可も経て再生手続が終了し、Aさんは再生計画に従って弁済を続けていました。
 

既に、負債の4分の3以上の大半の弁済が終了したにもかかわらず、その後、Aさんが交通事故に遭ってしまい、長期間の入院をすることになりました。
 

そのために、その後の弁済ができなくなってしまいました。
 

このAさんは、その他にも、再生計画の変更により2年間の期限の延長をしましたが、とてもその程度の期間では残りの残債務を弁済することはできません。
 

Aさんのような状態に陥った場合に、もしもハードシップ免責制度がなければ、Aさんは「再生計画の履行を怠った」という理由により再生計画が取り消されてしまうのです。
 

 

民亊再生法 際189条
 

再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
 

(一) 再生計画が不正の方法により成立したこと。
 

(二) 再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
 

(三) 再生債務者が第41条第1項若しくは第42条第1項の規定に違反し、又は第54条第2項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。
 

 

これまで計画に従って、誠実に返済を続けてこられた債務者のAさんにしてみたら涙を飲む悔しさと辛さとなりましょう。

 

残債務を破産にて免責されるしかないのか・・・?

 

Aさんのような場合、債務者が残りの残債務の免責を得るには、別に破産を申立てて、破産法により免責を得るしかありません。
 

しかし、そもそも小規模個人再生手続は、破産を避けたいがために個人再生の手続を選択しているのです。
 

しかも、Aさんのような債務者は、「債務の大半を弁済」しながらも、「自らの責めに帰すことのできない」、いわば不可抗力により弁済ができなくなった債務者です。
 

このような債務者に対して、破産をしなければ免責されないということになると、債務者に対して残酷な制度であり、場合によっては悲しい結果を招く恐れもあるのです。
 

何よりも、小規模個人再生手続は、国民のための救済制度でありますので、そのお役目もないものになってしまいます。
 

そこで、下記に記述するような厳格な要件が債務者に備わる場合には、再生計画を完全に遂行していないにも関わらず、完全に遂行された場合と同様の免責を認めることとしたのです。
 

これがハードシップ免責と呼ばれるものです。
 

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ハードシップ免責の要件は非常に厳格!

 

これまでお伝えしましたように、ハードシップ免責というのは、大半の弁済を終えていた債務者が、その後の事情により残りの残債務の弁済ができなくなった場合に、完全に再生計画の遂行ができた場合と同様の免責を与えるとする制度です。
 

一方、債権者側からすれば、本来であれば再生計画案の全てが遂行されてはじめて残りの残債務の免責をされることが道理とされましょう。
 

ですので、再生計画を完全に遂行していない場合において、安易に免責を認めるのは不条理であり妥当ではありません。
 

よって、下記にお伝えするような非常に厳格な要件を全て満たす場合に限り、ハードシップ免責が認められることになったのです。
 

それではハードシップ免責の4つの要件を、順に確認してみましょう。
 

要件①債務者がその責めに帰すことができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり再生計画の遂行も困難な場合

 

 

民亊再生法 第235条
 

再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
 

 

「責めに帰することのできない事由」とは具体的には以下の事情が挙げられましょう。
 

①債務者が病気や怪我により、長期入院を余儀なくされて、当初予定していた収入が見込めなくなり、再生計画で定められた弁済期に返済することができなくなった場合。(※入院保険等でカバーできる場合は該当しません。)
 

②再生計画の大半を弁済した後にリストラにより失業し、再就職の努力もしているが、景気情勢・年齢などの事情から再就職が困難な場合。
 

③個人事業主が類焼や災害などにより店舗を失い、事業の継続が困難となり、就職の努力もしたが、景気情勢・年齢などの事情から就職が困難な場合。
 

上記ご質問者様の場合では、再生計画が否決されず、裁判所からも認可されて真面目にそそて着実に弁済を続けてきたところ、景気悪化に伴いボーナスをカットされてしまい、支払いを続けることができなくなってしまったというような場合です。

 

また、「再生計画の遂行も困難」というのは、いわゆる、2年を上限とする弁済期間の延長によっても残りの残債務の弁済ができない状態をいいます。
 

つまり、再生計画の変更により、再生債務を弁済できるのであれば、その方法に従わなければならないとされています。
 

要件②再生計画により変更された債権の4分の3以上の弁済を終えていること

 

 

民亊再生法 第235条第1号
 

第232条第2項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第3項ただし書に規定する各再生債権に対してその4分の3以上の額の弁済を終えていること。
 

 

要件②再生計画により変更された債権の4分の3以上の弁済を終えていること
 

 

民亊再生法 第235条第2号
 

第229条第三項各号に掲げる請求権(第232条第4項(同条第5項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第156条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその4分の3以上の額の弁済を終えていること。
 

 

第2の要件として、再生債権によて変更された各再生債権(劣後化されたものは除く)の4分の3以上の額の弁済を終えていることが重要です。
 

ハードシップ免責の効果は非常に強力なものであり、半分程度の弁済では許されず、それなりに利用要件のハードルを高く設定されています。
 

しかし、例えば、80%以上の弁済を要求しては利用者が極端に限定されてしまい、それではハードシップ免責の意義が活かされない恐れも出てきましょう。
 

その辺りの調和点として、「4分の3」という数字になされたとされています。

 

要件③再生計画の変更をすることが極めて困難にあること

 

 

民亊再生法 第234条

小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。

 

 

民亊再生法 第235条第4号
 

前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
 

 

上記234条において、再生計画の履行がやむを得ない事由によって困難となったときに、弁済期間の延長に限っての再生計画を認めています。
 

つまり、債務者の困難の度合いに応じて、再生計画の変更とハードシップ免責を使い分けるという趣旨であり、変更できる場合には弁済期間を延長して弁済に努めることが基本であり、ハードシップ免責はそれもできない場合に限定されるものとしているのです。

 

要件その④「再生債権者の一般の利益に反するものでないこと」とは?

 

 

民亊再生法 第235条第3号
 

免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
 

 

「債権者の一般の利益に反するものでない」というのは、【清算価値の保障】といわれる概念であり「清算価値保障原則を守りなさい」ということを意味しています。
 

つまり、再生計画の認可が決定された時において、たとえ破産が行われた場合における「破産配当の総額以上の弁済がなされている」場合を意味しています。
 

破産になった場合の配当より低い金額の弁済しか行われていない場合にまで「破産免責」と同じような免責を認めることは、債権者の利益を不当に害することになりますので、この要件が設けられているのです。

 

関連記事>>>小規模個人再生における清算価値保障原則と最低弁済額の関係とは?

 

ハードシップ免責は、以上の厳格な要件を全て満たす場合にのみ、認められるものであり、決して、安易な逃げ道を用意する策ではないことを心に留めてまいりましょう。。
 

ショウブ(優しい心)ショウブ(優しい心)

ハードシップ免責の決定を得た場合でも、住宅ローン債権者の持つ抵当権には及びません。

ですので、この場合、住宅ローンの返済についても再生計画に定められたとおりの返済を続けていくのが厳しく、定められた返済を怠った場合には、債権者から再生計画の取消の申立てがなされてしまいます。

そして、最終的には抵当権が実行されて、自宅を手放すことになる場合もあるのです。

どうか、どうか・・・くれぐれも気を付けてくださいね。

 
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