「債務者の自分が病気のために、長期の入院を余儀なくされた」
 

「再生計画で定められた返済を行っている終盤になってリストラで失業してしまった」
 

さらに、失業された方の中には、「再就職の努力をしたものの年齢や経済情勢のために再就職が困難」となる場合がありましょう。
 

そのようなケースでは、再生計画の変更すら困難な状況に陥ってしまうものです。
 

このような場合に、一定の条件をクリアしている状況に限り、最後の手段として残されているのが「ハードシップ免責」と呼ばれるものです。
 

ハードシップ免責では、返済金額の4分の3以上の返済をすでに行っていた場合には、その残りの借金の支払い義務の免除を受けることができます。
 

本章では、ハードシップ免責における手続と効果について、民事再生法を基にわかりやすく解説いたします。
 

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ハードシップ免責の手続とは?

 

ハードシップ免責の手続は、債務者本人のみの申立てにより開始されます。(債権者から申し立てることはできません。)

 

 

民亊再生法 第235条 第2項
 

再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。

 

(一) 第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
 

(二) 第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
 

(三) 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
 

(四) 前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。

 

 

債務者により申立てがなされた裁判所は、免責の許可または不許可の決定を行うことになりますが、その際に、債権者から意見の聴取が必要となります。
 

 

民亊再生法 第235条 第2項
 

前項の申立てがあったときは、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴かなければならない。
 

 

なお、債権者の意見は聴取はするものの、決議までをも必要とはされていません。(もっとも、破産の免責手続においては債権者の決議の必要はありません。)
 

もっとも、債権者の意見を参考に、裁判所はハードシップ免責の許否を判断することになります。

破産免責が免責不許可事由を起点とした規定であるのに対して、ハードシップ免責は、所定の要件を全て満たす場合に免責が許可となる規定がなされています。

ハードシップ免責の要件を満たす場合は?

 

債権者によって、裁判所に申し立てられたハードシップ免責の申立てが、その要件を全て満たしている場合、必ず免責許可の決定をしなければなりません。
 

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ハードシップ免責を受けるための必須要件
 

①債務者がその責めに帰すことができない事由により、再生計画を遂行することが極めて困難となった場合。
 

②再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
 

③再生計画によって変更された後の各再生債権に対して、それぞれ4分の3以上の額の弁済を終えている場合であること。
 

④ハードシップ免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでない場合のこと。
 

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一方、ハードシップ免責の要件を満たしていない場合には、不許可の決定を受けることになりましょう。
 

この裁判所による免責の許可及び不許可の決定については、債務者だけでなく、債権者にも即時抗告権が認められています。
 

 

民亊再生法 第235条 
 

第3項

 

免責の決定があったときは、再生債務者及び届出再生債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
 

第4項
 

第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
 

 

したがって、即時抗告をする機会を与えるために、裁判所は免責についての決定をした時は、債務者及び債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならないとされています。

 

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ハードシップ免責の効力の発生時期は?

 

ハードシップ免責は、その決定が確定しなければ効力は生じません。
 

 
民亊再生法 第235条 第5項
 

免責の決定は、確定しなければその効力を生じない。
 

 

即時抗告期間の経過または即時抗告の申立てが却下若しくは棄却された場合に確定することになります。
 

ハードシップ免責の効果とは?

 

ハードシップ免責の決が確定すると、債務者は既に履行した部分は除いて、また再生手続開始前の罰金などを除き、全ての残りの債務を免れることになります。
 

 

民亊再生法 第235条 第6項
 

免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第229条第3項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
 

 

つまりは、完全に再生計画を遂行して、免責を受けるのと同じ効果を得ることになります。
 

よって、残りの債務について弁済する必要はなくなり、債権者から強制執行を受けることもなくなります。
 

なお、破産の場合も免責を受けますが、破産の場合よりもハードシップ免責のほうが免責を受ける範囲が広いのが特徴といえましょう。
 

ハードシップ免責には「非免責債権」の規定がない

 

さらに、ハードシップ免責では、破産免責手続における非免責債権の規定がありません。
 

もっとも、「非免責債権」というのは、免責されないとされる債権のことです。
 

具体的には、破産の免責を受けることで破産者は、その破産手続による配当を除き、債権者に対する債務の全部についてその責任を免れることができます。
 

しかし、「租税請求権」をはじめ、「破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」「給料請求権」・「破産者が知って債権者名簿に記載しなかった請求権」などは、非免責債権とされており、それらは免責を免れません。

 
したがって、破産における免責の場合には免責はされませんが、ハードシップ免責の場合においては、【免責される債権が存在する】ことになります。
 

例えば、「債務者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償権」をはじめ、「債務者が知りながら債権者一覧表に記載しなかった請求権」等です。
 

ハードシップ免責の効力は担保権に及ぶのか?

 

ハードシップ免責の効力は、別除権者が有している担保権や再生債権者が再生債権者の保証人等に対して有する権利や、債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保などには影響を及ぼしません。
 

 

民亊再生法 第235条7項
 

免責の決定の確定は、別除権者が有する第53条第1項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
 

 
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ショウブ(優しい心)ショウブ(優しい心)

途中で返済計画が守れなくなってハードシップ免責を受けた場合、元の再生計画が認められた時から7年以内の再利用はできませんので、くれぐれもご注意くださいね。

ハードシップ免責の利用については、弁護士や司法書士とじっくり相談をしながら進めてまいりましょう!